月下の誓約
「一日中そんな事を考えていたのか?」
「はい。他の事したり、考えたりしようとしてもできなかったので、いっそ徹底的に自分の心と向き合ってみることにしました。いつからなのか。どうしてなのか。それについては結局わかりませんでしたが」
和成は半日かけて初めて紗也に会ってから今までの記憶を辿り直してみた。
そして、あの時も、その時も、心が揺れたり弾んだりしたのはきっとそういう事だったのだろうと思い当たる事はいくつも見つけた。
見つけた事をそう思って見つめ直してみると、改めて胸がほんのりと暖かくなる。
ぼんやりとしながら、ある意味幸せな一日を過ごせたような気がした。
塔矢が静かに問いかける。
「結論は出たのか?」
「結論はひとつしかありません。私はこの想いを封印します。今はまだ、きっぱり”捨てる”と言えませんが、いずれそうするつもりです」
「そうか」
塔矢は頷いて和成の部屋を後にした。