月下の誓約


 夜、床に就いた和成は寝台に横になって、窓の外をぼんやりながめていた。
 空には少し欠けた月が浮かんでいる。

 満月の夜、戦場で見た紗也の泣き顔、手の平や背中に触れた紗也の温もりを思い出す。
 捨てなければならない想いがこみ上げてきて胸を締め付けた。

 想いに決別するため、声に出して言ってみる。


「好き……でした」


 目頭が熱くなり、手の平で目を覆った。

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