月下の誓約


 ようやくうとうとしかけた時、不審な物音を聞いた気がして和成は目を覚ました。

 時刻はすでに真夜中だ。
 ゆっくりと身体を起こし、耳を澄まして辺りの様子を窺う。
 部屋の前の廊下に人の気配を感じた。

 枕元に置いた刀を掴むと、静かに寝台を降りる。
 足音を忍ばせ戸口に身を寄せ、外の様子を窺った。
 確かに人の気配がする。

 和成の部屋の少し先には紗也の居室へと続く渡り廊下がある。
 深夜には門が閉じられ施錠されるとはいえ、不審者の城内進入を見過ごすわけにはいかない。

 和成は静かに鯉口を切り、勢いよく戸を開けて廊下へ駆け出した。


「何者だ?!」


 すると、廊下にいた人物は小さな悲鳴を上げて、両腕で頭を抱えながら壁際へと逃れた。

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