月下の誓約


 見知った姿と声に、和成は慌てて抜きかけた刀を鞘に収める。


「紗也様?!」


 壁に縋りついたまま気まずそうに振り返った紗也を見て、和成はガックリと肩を落とした。


「真夜中に何をなさってるんですか。あやうく不審者と間違えて斬り捨てるところでしたよ」

「和成に訊きたい事があるの。もう寝てた?」

「普通寝てますよ、こんな時間には。お話なら明日あらためてお伺いしますので、今夜はもうお休みください」


 頭を下げた和成に、紗也は深刻な表情で詰め寄る。


「一言ですむから、お願い。今答えて」

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