月下の誓約


 さも不満げに言われて、和成は思わずため息を漏らした。


「今まで以上にわがままをおっしゃるつもりだったんですか」

「言っても和成は聞いてくれないじゃない」

「あたりまえです。私の任務はあなたの護衛です。わがままを聞くのは業務に含まれておりません」

「じゃあ、護衛に関係あることならいい?」


 一言で済むと言った割りにまだ何か言おうとする紗也を和成はやんわりと制する。


「もう遅いので明日ではダメですか?」
「くわしくは明日話す。今はちょっと見てみたいだけ。それ、真剣よね?」


 相変わらず和成の言う事には聞く耳持たず、紗也は和成の握った刀を指差した。


「そうですけど」
「ちょっと抜いて見せて」
「申し訳ありませんが、城内での抜刀は原則禁止されております。今ここで抜いてお見せする事は致しかねます」

< 166 / 623 >

この作品をシェア

pagetop