月下の誓約


 和成が紗也に言う事の大半は、彼女の君主にあるまじき言動に対する注意しかないというのに。

 話を聞いて塔矢は、笑いながら答えた。


「俺の方がおやじだからだろう」
「ですが、あの方からご覧になれば、私も充分おやじだと思いますが」
「そういえば、おまえの方が九才も年上だったか」


 食い下がる和成にチラリと視線を送り、塔矢はクスリと笑った。


「……にしては、かわいいおやじだな」


 途端に和成は、両手で頬を押さえて激しく動揺する。


「かわいいとか言わないで下さい! 塔矢殿もあの噂を聞いたんですか?」
「何の話だ?」


 興味深そうに問い返す塔矢に、しまったと思いながらも、和成は視線を逸らして渋々白状した。

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