月下の誓約
「あ、なるほど。ようするに女の子に人気の居酒屋でいいわけだ」
納得したものの和成はすぐにガックリと肩を落とす。
「でも、どっちにしろ俺、そういうとこ知らないし」
塔矢に指摘された通り、和成は城下の繁華街を出歩く事がほとんどない。
居酒屋はおろか、どこにどんな店があるのか、全くと言っていいほど把握していないのだ。
右近に探してもらおうにも、彼は砦に常駐して長いので、情報量は和成と大して違わないだろう。
いっそ毎日城下から通っている塔矢にでも訊こうかと考え始めた時、ふと思いついた。
「なぁ、ひとり若い奴連れてっていいか?」
『お? 珍しいな。城勤め五年目にして初めての友達か?』
「友達ってわけじゃないけど、俺の命の恩人。情報処理部隊だから情報収集は得意だろう。俺よりいい店探してくれるはずだ」