月下の誓約


「どうぞ」


 刃を見つめて紗也が目を細める。


「こんな近くで刀を見たの初めて。きれい……」
「昨日研いだばかりですからね」


 どうしてわざわざ真剣が見たいのか、和成には不思議に思えた。
 戦の時、紗也が心に受けた衝撃から察するに、刀なんか見たくもないだろう。

 自分の初陣の時はそうだった。
 戦の後、しばらくは刀を握るのが怖かった。


「持ってみていい?」
「案外、重いですよ。両手でしっかり握って下さい」


 和成は左手で柄の端を握り直す。
 その手の上を紗也が両手で握った。

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