月下の誓約


 受け取った刀を鞘に収め、厳しい表情で紗也に言う。


「お教えするのはかまいませんが、ひとつお聞きしたい事がございます」


 キョトンと首を傾げる紗也をまっすぐに見つめて、和成は静かに尋ねた。


「あなたは、人を斬る覚悟がおありですか?」


 血まみれの和成の姿を思い出して、紗也は息を飲む。
 その様子に和成は苦笑した。


「やはり怖いでしょう? 刀は武器です。人を斬るための道具なんですよ」


 紗也なりに反省して導き出した答なのだろうが、深くは考えていなかったのだろうと和成は悟る。そして、やんわりと断った。


「私は、相手を斬らずに自分の身を守る剣というものを存じません。あなたにお教えできるのは人の斬り方になってしまいます。個人的に、あなたには血で汚れてほしくないと思いますし」

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