月下の誓約


 先輩のひとりが通りすがりに声をかけた。


「おまえ、ここにいたのか。総務の部長が捜してたぞ。なんか、会計の情報がどうとか言ってたけど」

「会計?」


 首を傾げる和成の隣で、なぜか紗也が不安げな表情になる。

 次にやってきた先輩も、和成を見て声をかけた。


「和成。塔矢殿が早めに切り上げて戻れってさ」


 途端に紗也がそわそわし始めた。


「あの。和成忙しいみたいだから、私、もう帰るね」


 早口でそう言って、逃げるように道場を出て行く。

 わけがわからず和成が呆然として見送っていると、紗也と入れ替わりに慎平が血相を変えて飛び込んできた。


「和成殿! 大至急電算室にお越し下さい!」

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