月下の誓約
17.会計情報消失事件
慎平と共に電算室に向かう途中、和成は事の次第を聞いた。
会計の情報が電算機の中から全消去されたという。
外部から何者かが電算機に干渉し、意図的に消去したわけではないらしい。
城内の誰かが、誤って削除してしまったのだろうという事だ。
だが各種情報を呼び出すには、認証番号ごとに権限が設けられている。
全消去を実行できる認証番号は城内でもごく限られた人間にしか与えられていなかった。
その事実と先ほどの不審な態度。
状況証拠から和成には犯人の目星がついていた。
あとは物的証拠を押さえて怒鳴り込むのみ。
そのために呼ばれたようなものだろうと和成は推測していた。
電算室に足を踏み入れた和成は、不覚にも一瞬たじろぐ。
ある程度予想はしていたが、電算室の中は蜂の巣をつついたような大騒ぎで、予想以上に混沌としていたのだ。
有線無線を問わず電話が鳴り響き、職員たちはバタバタと対応に追われている。
その中から和成の姿を認めた電算部長こと情報処理部隊長が足早に歩み寄ってきた。