月下の誓約


 和成は諦めて、もう一度塔矢に尋ねた、


「塔矢殿はどうして紗也様の出陣を承諾したんですか?」

「さっき言った通りだ。あの方は君主だ。ご本人のおっしゃる通り、何も知らないままでいいわけはないだろう」

「そうですけど、まるで物見遊山にでも行くような軽い調子が不安で……」


 なおも繰り言を続ける和成の鼻先に、塔矢は人差し指を突きつけた。


「紗也様のお考えがどうであれ、あの方をお守りするのがおまえの仕事だ。死ぬ気でお守りしろ。泣き言を言うな」

「すみません」


 ピシャリと一蹴され、和成は愚痴を飲み込み塔矢を見つめる。
 塔矢もそれを見つめ返し、更に一言、低い声で付け加えた。


「死んでも守り抜け」

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