月下の誓約
「和成。電算機の方はどうなってるんだ?」
その声に本来の目的を思い出して、和成はすかさず反撃に出た。
「あやうく問題をすり替えられるところでした。紗也様。いったい何をどう思って会計情報を全消去なさったのですか?」
途端に紗也は、顔を引きつらせて目を泳がせる。
「なんにもしてないもん。ただ見てただけだし」
「なんにもしてないのに壊れてもいない機械から情報が消えることはございません! あなたがなさったという証拠もございます」
和成はそう言って、二つの履歴情報を紗也の目の前に突きつけた。
紗也は用紙を見つめて絶句する。
「だいたい、消去前に警告文が二回も出るでしょう。二回とも”はい”を選択したのはどうしてなんですか?」