月下の誓約
18.月下の邂逅
電算室に戻ると、慎平が命令の解析と改造を終えていた。
十分に使えると言うので、一気に復旧作業が早くなりそうだ。
朝までかかると思われた作業は深夜零時前に終了した。
切り離されていた会計用主機を情報通信網に接続し、主機と端末の双方で情報の呼び出し試験を行う。
会計情報が無事に全消去前の状態に復旧したことが確認されて、電算室には歓声と拍手がわき起こった。
深夜零時を過ぎると城の出入りは禁止される。
そのため電算部職員は城内の宿泊所へと引き上げた。
和成は彼らと別れ、自室へ向かう。
灯りの消えた誰もいない廊下を歩きながら中庭に目をやると、庭の木々が月明かりを浴びて銀緑色に照り映えていた。
今宵の空もよく晴れているらしい。
廊下の途中にある石段を下りて、中庭に出た和成は空を見上げる。
中天にかかる満月より少し欠けた月が、あたりを明るく照らしていた。
和成は月を見上げたまま、廊下に沿って中庭をゆっくりと歩く。
気が付くと自室の前を通り過ぎ、君主の居室を取り囲む堀の前まで来ていた。