月下の誓約


 君主居室のある敷地は中庭より一段高くなっている。
 そして堀の周りは双方とも生垣で囲まれていた。

 生垣の前で立ち止まった和成は、そのまま月を見上げる。

 戦場で血に汚れた自分を清めてくれる様に、紗也への想いも洗い流してくれたらいいのにと願ってみた。
 目を閉じて月光に身を委ねる。


「あっ! 不審者発見!」


 突然対岸から声が聞こえ、和成は目を開いた。

 見ると、堀を囲む生垣の向こうから紗也が和成を指差して笑っている。
 和成も少し笑って問いかけた。


「また、真夜中に徘徊なさってるんですか?」


 ペロリと舌を出して、紗也は言い返す。

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