月下の誓約
「散歩。眠れないときとか、時々夜に庭を歩くの」
それを聞いた和成は、納得して苦笑をもらした。
「それで時々昼間に執務室で居眠りなさってるんですね」
「ちょっと! 変な納得の仕方しないでよ」
ムッとした表情でわめく紗也を見て、和成は声を出して笑う。
そしてふと思った。
この光景はまるで自分と紗也の立場のようだ。
声は届くし、姿は見える。
だが、紗也は一段高い場所にいて、間には決して越えられない堀がある。
ひとしきり笑った後、未だに不愉快そうな紗也に、和成はなだめるように静かに言う。
「もうお休みになった方がいいですよ」
「うん」