月下の誓約
塔矢の真剣な眼差しが、和成を信頼し紗也の命を預けている事を物語っている。
それを悟って和成は、覚悟と決意を固めしっかりと頷いた。
「はい」
塔矢は表情を緩め頷き返すと、一気に茶を飲み干し席を立った。
「二時から軍議だ。それまでに策を練っとけよ」
「え? 私がですか?」
驚いたように問いかける和成に、塔矢は眉をひそめる。
「当たり前だろう。おまえ軍師じゃないか」
「そうですけど、今回は紗也様の護衛の任が……」
「そんなもん兼任に決まっているだろう。おまえの他に誰がやると言うんだ。他にいないだろう。うちは万年人手不足なんだぞ」
確かに和成が軍師になる前は、軍師がいなかった。
そして未だに他の軍師はいない。
ということは、戦略を練り戦況を見守りながら、紗也の身も守らなければならない。
肩の上にずっしりと重い荷物を載せられたような気がした。
思わず漏れそうになるため息をこらえて、和成は肩を落としながら返事をした。
「……わかりました。やります」