月下の誓約
第二話 月に願いを
1.天才美少年軍師第一報
「誰? これ」
電算室の席に着いた途端、目の前に差し出された紙を見て、和成は怪訝な表情を浮かべた。
「和成殿だそうですよ」
笑いながら慎平が示したその紙には、眩しい笑顔を湛えた金髪美少年の合成写真が印刷されている。
写真の下には紹介記事も書かれていた。
”負け戦知らずの杉森国! その影には謎の天才美少年軍師の存在があった!(※写真は想像図)”
記事を読んだ和成は、思い切り顔を引きつらせる。
「何? これ。想像図って、何をどう想像したらこうなるんだよ。そもそも俺、少年って年じゃないし。これどこで手に入れたんだ?」
「広域情報通信網の三面記事で配信されていました」
それを聞いて、和成はげんなりしながらため息をついた。
「あぁ、そう。秋津全土に流れてんのか」
「苦情の電信でも送っておきましょうか?」
「放っとけ。これ見て俺だと思う奴いないだろ」
和成が吐き捨てるように言うと、慎平は目を輝かせて手を打った。
「なるほど。敵の目を撹乱する事ができますね」
「まぁ、そういう利点もあるかな」