月下の誓約
元々、裕福でなかった杉森国は、国交が途絶えた後、益々国の懐事情は厳しくなっていった。
まわりはすべて大国なので、対抗するには軍事費をこれ以上削る事ができない。
そのため城内出入りの軍人は国の官吏も兼務することで国家予算の人件費削減に努めている。
貧乏をこじらせた杉森国では”時は金なり”が国家の標語だ。
何事も無駄な時間をかけずに効率よくこなすことを目標として、あらゆるものを効率化していった結果、他国より数多(あまた)の分野で突出した最新の技術力を誇っていた。
杉森国の唯一の資産は、この技術力とそれを担う人材と言っていいだろう。
他国もこの資産は、のどから手が出るほど欲している。
杉森を無傷で落とせば、島の要衝と共に最新の技術力が手に入るのだ。
それはその後の戦を優位に導く切り札となるだろう。
そういう思惑があるからか、全面攻撃を仕掛けてきたりはしない。
他国の思惑をよそに、涙ぐましい経費削減の努力をしながら、貧乏な杉森国は細々と国を維持し続けていた。