月下の誓約
電算部の仕事に一区切りつけて、和成は総務部に向かった。
こんな風に各部署を巡るのが、彼の日課となっている。
五年前に紗也の護衛官に就任した時、和成には城内に居室が与えられた。
そのため城にいる時間が長いので、あちこちの部署で便利に使われている。
五年経った今ではそれが全て通常業務となっていた。
元々は所属部隊長、坂内塔矢の元で通称”経理”と呼ばれている財務局の官吏だが、いったいどこの所属だかわからない状態になっている。
総務部長から塔矢宛ての書類と言伝てを受け取り、和成は君主の執務室へと向かった。
塔矢は財務局国庫部部長なので、局内にも自分の席を持ってはいるが、日中は大概執務室にいる。
書類に署名をするだけとはいえ、紗也にしかできない仕事があるにもかかわらず、放っておくと紗也は居眠りしたり、執務室から出て帰ってこなかったりするからだ。
彼女が即位して間もない頃は、そんな事が度々あった。
最近は落ち着いたとはいえ、飽きっぽい性格は相変わらずなので、塔矢が目を光らせているわけだ。