月下の誓約
「失礼します。塔矢殿こちらですか?」
声をかけて和成が戸を開けると、塔矢が返事をするより先に部屋の一番奥から紗也が笑いながら駆け寄ってきた。
「和成。髪を金色に染めてみない?」
「全力でお断りいたします」
間髪入れずに和成が拒否すると、紗也は不服そうに眉根を寄せて両手で和成の腕を取る。
そして駄々をこねるように和成の腕を左右に振りながら口をとがらせた。
「なぁ~んでぇ~? 絶対似合うと思うのに~」
和成は紗也を振りほどいて、思い切り不愉快そうに睨む。
「大方、あのふざけた三面記事を御覧になったんでしょう?」