月下の誓約
「そうですか? 普通に怒鳴ってたじゃないですか。それに夕方からは毎日、あいつに電算機の操作を教わってるんでしょう? 何か思い当たる節でもおありですか?」
逆に問い返され、紗也は腕を組んでうなった。
「うーん。そう言われると特にないんだけど。強いて言うなら女の勘」
塔矢は思わず吹き出しそうになるのをグッとこらえて笑顔で返す。
「おやおや。だったら私にはわかりようがありません。女じゃないので」
紗也は頬を膨らませて塔矢を睨んだ。
「もう! 塔矢はいつも私を子供扱いする!」
「これは失礼いたしました」
頭を下げながらもまだ笑っている塔矢から目を逸らし、紗也はひとつため息をついた。