月下の誓約
昼食後、食堂を出た和成は昼休みの残りを読書に当てるため、自室に戻ろうとしていた。
そこへ後ろから、慎平が声をかけながら走ってきた。
和成が振り返ると、慎平は人目を気にするように周りを窺う。
そして人影が途絶えた隙に、懐から封書を取り出して両手で和成に差し出した。
「これ、読んで下さい」
和成は受け取った封書の裏表を確認する。
どちらにも何も書かれていない。
「何? これ」
不思議そうに首を傾げる和成に、慎平は再び周りを気にしながら耳元で囁いた。
「恋文です」
「は?」