月下の誓約
予定通り二時に軍議は始まった。
城内大会議室に前線部隊統括の塔矢と各部隊長、軍師の和成が一堂に会し、そして今回は紗也も参加していた。
初めて参加する軍議は、紗也にとっては何もかも珍しく新鮮で興味深い。
けれど自分が参加しているという意識は低かった。
なにしろまわりは大人の男性ばかりで、飛び交う軍事用語は意味のわからないものも多く、内容の半分も理解できているかどうか怪しい。
やがて和成による戦略の説明が始まった。
室内正面中央には巨大な液晶画面が設置され、そこに戦略図が表示されている。それを指し示しながら和成が、部隊の配置や作戦を説明していく。
そして説明を終えた和成が席に着くと、室内に奇妙な空気が流れた。
部隊長たちは皆一様に、困惑した表情で顔を見合わせている。
塔矢は苦虫をかみつぶしたような顔で、和成を睨んでいる。
和成はそれらから視線を逸らし、居心地が悪そうにしている。
ひとりだけ意味の分からない紗也は、キョロキョロと視線をさまよわせた。