月下の誓約
「それは軍人の多い電算部に人員要請した時点で織り込み済みじゃないか? それに、おまえひとりじゃないぞ。軍人じゃないが、電算部からもうひとり女性が志願して行くらしい」
「女性?」
天井から塔矢に視線を移し、和成は尋ねた。
「橘佐矢子(たちばなさやこ)殿ですか?」
塔矢は少し目を見開いて、驚いたように問い返す。
「その通りだが、おまえが女性を個体認識してるってのは珍しいな。経理の女の子に局外で会っても気付かないくせに」
「佐矢子殿は電算部の部長代理ですから、直接仕事を頼まれる事もあるんですよ。部長が信頼して留守を任せるほど仕事もできるし、後輩の面倒見もいいし。それに……」
そこまで言うと、和成は塔矢から目を逸らしてつぶやいた。
「紗也様と名前が似てたから」