月下の誓約
それを聞いて、塔矢は軽くため息をつく。
「まだ、吹っ切れてないか」
和成は黙って俯いた。
紗也への想いを自覚してからの方が、変に意識してしまい吹っ切れずにいるのだ。
「俺はもうだいたい吹っ切れたもんだと思ってたんだがな。紗也様がおっしゃってたぞ。おまえに避けられてるような気がするって。女の勘だそうだ」
俯いたまま口元に微かな笑みを浮かべ、和成は白状した。
「どうして女の人って根拠のない事を正当化するのにその言葉を使うんでしょう。しかも案外当たってるから否定もできない。避けてはいませんけど、用もないのにそばにいないようにしようとは思っていました」
塔矢は茶を一口飲み、缶を持った手で和成を指差す。