月下の誓約


「紗也様は案外鋭いぞ。先の戦の後、俺も度肝を抜かれた。紗也様と自然に距離を取りたいなら今回の話は渡りに舟だろう。その辺も考慮に入れて検討してみたらどうだ。返事は休み明けでいい。おまえ明日休みだったよな」

「はい。わかりました」


 話は終わったものと、缶を持って立ち上がろうとする和成を、塔矢が慌てて制した。


「待て。まだ話はある」
「あ、そうですか?」


 和成が再び腰を下ろすと、塔矢は尋ねた。


「おまえ、最近よく城下を出歩いてるらしいな」
「塔矢殿が引きこもってないで外に出ろと言ったんじゃないですか」


 もちろんそれは口実だった。
 特に目的があるわけではないが、仕事の時間以外はなるべく城内にいないようにしていた。
 城内にいれば、うっかり紗也と顔を合わせる機会が増えるからだ。

< 216 / 623 >

この作品をシェア

pagetop