月下の誓約
「で、話元に戻しますけど。つまり、城内ってことは考えにくいので城下に他国の間者が潜り込んでいるってことですか?」
塔矢は腕を組んで椅子の背にもたれる。
「可能性としては否定できない。人の出入りは規制されているとはいえ皆無という訳じゃない。情報の出所は女官たちの噂話あたりかもしれないが、用心に越したことはない」
「どうして私が用心しないといけないんですか?」
他人事のように言う和成に、塔矢はピシャリと机を叩いた。
「だからおまえは自分の価値がわかってないと言うんだ。敵は”天才美少年軍師”のおまえがいるからうちに勝てないと思ってるんだ。ということはおまえがいなくなればうちに勝てると考えていることになる。おまえは命を狙われているかもしれないだろう」
和成は再び脱力する。