月下の誓約


 奇妙な空気を打ち払うかのように、塔矢が口を開いた。


「和成。なんだ、その守り一辺倒な布陣は」


 すると部隊長のひとりが、塔矢をなだめるように和成を弁護した。


「まぁ、今回は紗也様もいらっしゃることですし、守りが堅いのはいい事ではないですか」


 だが塔矢は引き下がらない。


「確かに、これだけ守りが堅ければ少々の事では崩されないだろう。だが守っているだけでは敵は退いてはくれぬぞ。持久戦にしたいのか」


 塔矢の言葉が部隊長たちの困惑を代弁していた。

 弁護に回っていた者も口をつぐむ。
 和成が相変わらず押し黙っていると、塔矢が軍議を仕切った。

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