月下の誓約


 当然とばかりに主張して、塔矢は和成を指差した。
 それを一瞥し、和成は大きくため息をつく。


「中途半端って何ですか」
「おまえは中途半端なんだ」
「意味がわからないんですけど」
「自分で考えろ」
「また謎々ですか?」


 意味不明な指摘に、和成はうんざりしたように顔をしかめた。
 そんな事にはおかまいなしに塔矢は続ける。


「どちらにせよ政略結婚なんか受けたら、うちの国内は滅茶苦茶にされるだろう。紗也様は一人娘だ。養子を迎える事になる。人質を取るのは杉森の方なんだから悪い話じゃないだろうと相手は言うが、それでどこかと同盟でも結んでみろ。うちは間違いなく最前線の拠点だ。国が無傷で済むわけがない。だから紗也様に結婚話なんか聞かせるわけにはいかないんだ」

「五十や六十のおやじなら紗也様も断るんじゃないですか?」


 苦笑する和成に、塔矢は意地悪な視線を向ける。

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