月下の誓約


「たまに若いのもいるんだ。おまえよりもな」
「え?」


 和成の心がうっかり騒いだのを、塔矢は見透かした。


「おまえがうろたえるな。もしも紗也様好みの男前の写真なんか送ってこられて気に入られたら困るだろう。だから全部握り潰す」


 塔矢から目を逸らし、和成は腕を組んで考え込む。


「紗也様好みの男前ってどんなんだろう」

「こら、変なとこに食いつくな。とにかく敵の標的は紗也様だけでなく、おまえにも移ったってことだ。明日、城外に出るなら刀は持って行け。おまえが間者ごときにやられるとは思わないが、用心はしろよ。話は以上だ」

「わかりました」


 二人は席を立ち、共に会議室を後にした。

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