月下の誓約
庭木の間を少し進み、池の畔で佐矢子は立ち止まる。
そしてそこに置かれた長椅子の端に腰掛けた。
和成もその横に腰を下ろす。
少し待ってみたが、佐矢子は相変わらず冷たい表情で水面を見つめている。
和成が視線を外そうとした時、佐矢子が池を見つめたまま口を開いた。
「どうして手紙を読んでくれなかったんですか?」
「あなただったんですか」
佐矢子が和成の方を向いて、正面から見据える。
目に非難の色が浮かんでいた。
「読まずに返すなんて失礼です」
「相手が誰だろうと断るつもりだったので、読んだ挙げ句に断る方が失礼だと思ったんです」
「では、いっそ失礼ついでに受け取った後、捨ててくれればよかったのに。
あれでは私がふられた事を慎平くんに暴露しているのと同じではないですか」
「あ」