月下の誓約
和成は一瞬絶句して、気まずそうに視線を逸らす。
「すみません。そこまでは考えが及びませんでした」
佐矢子もすねたようにフイッと和成から目を逸らして続けた。
「元々、玉砕覚悟の上でしたからあなたに想いを返してもらえるとは思っていません。ただ、秘めているだけでは辛いから伝えたかっただけなのに。あなたはそれすらも許してくれないんですね」
秘めている辛さを和成は知っている。
想いを伝えることを許されない辛さも。
それを痛いほど知っている自分が、同じ思いを佐矢子にさせていたのを知り、和成は自分の浅はかな行為を激しく後悔した。
おもむろに佐矢子の方へひざを向け、深々と頭を下げる。
「私の思慮のなさがあなたを傷つけていた事、本当に申し訳ありませんでした」