月下の誓約
驚いたように見つめる佐矢子に、和成は顔を上げて更に言う。
「今更だとは思いますが、あなたの想いに答えることはできませんけど、もしよければ、手紙だけでもきちんと読ませていただきたいと思います」
佐矢子は胸元に手を当てて、困ったように和成を見つめた。
「ダメですか?」
和成が尋ねると、佐矢子は気まずそうにゆっくりと懐に手を滑り込ませる。
そして取り出した手紙を黙って和成に差し出した。
和成の受け取った手紙は、封筒ごと真っ二つに裂かれていた。
手紙を握りしめて和成は再び頭を下げる。
「本当に申し訳ありませんでした」
「本当にそう思っているなら、私にひとつお詫びの品を下さい」