月下の誓約


「和成、おまえも最良の策だとは思っていないだろう。もう一度練り直せ」


 塔矢の提案により、和成には一時の猶予が与えられ、夕方にもう一度軍議を開くこととなった。

 部隊長たちが解散すると、会議室には塔矢、和成、紗也の三人だけが残された。

 あまり初歩的な事を訊くのも気が引けるので、ずっと黙っていた紗也がいつもの面子になった途端、抱えていた疑問を塔矢に投げかけた。


「どうして持久戦になるといけないの?」
「戦が長引くからですよ。紗也様もそれはお嫌でしょう?」
「うん。長引くと人がたくさん死ぬから?」
「そうですね。それが一番よくない事です」


 紗也のつたない意見にも、塔矢は静かに頷いて認めてくれる。
 それに気をよくして、紗也はもうひとつの疑問を口にした。


「ねぇ、どうして和成が軍師なの?」

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