月下の誓約
「和成殿は文武両道に秀でて、頭脳明晰、眉目秀麗、完全無欠の天衣無縫で近寄りがたい存在なんです」
それを聞いて、和成は引きつったような苦笑いを浮かべた。
「慎平慎平、その四字熟語の羅列、俺、背中とか首筋が痒いんだけど。みんなそんな風に誤解してるわけ?」
「誤解じゃありません。本当にそうですよ。ただ、右近殿が言うには近寄ってみれば案外間抜けな奴だそうです」
途端に和成はムッとして目を細める。
「あいつ……」
その様子に慎平はクスクス笑った。
「私がこうして近寄れたのは偶然と幸運のおかげですけど、それまではやっぱり違う世界の人のような気がしてました。案外普通の人だったので安心しています」
「ものすごく普通の人だって。そんな”近寄るな光線”発してるつもりないんだけどな。まぁ、恋愛する気ないから女性に近寄りがたいって思われてるのはそれでいいけど」
大きくため息をついて、和成は肩を落とす。