月下の誓約


 風呂上がりの濡れた髪を手ぬぐいで拭きながら、和成は自室へ向かって廊下を歩く。
 すでに日は落ち、空には星が瞬いていた。

 和成に与えられた部屋は、基本的に寝泊まりするためだけのもので、部屋の中には小さな洗面所と給湯設備が備えられているだけだ。

 風呂、お手洗い、食堂は城に滞在する者たちが共同で使用している。

 自室に戻った和成は、まっすぐに机に向かった。
 そこに置かれた佐矢子の手紙に手を伸ばす。

 手ぬぐいを頭にかぶったまま椅子に座って、裂けた封筒から手紙を取り出し、机の上でつなぎ合わせた。
 そしてそのまま両手で押さえて読み始める。

 そこには佐矢子の目から見た和成の姿と、そんな和成をどんな風に自分が想っているのかが切々と語られていた。

 好きな相手の事はこんなにも輝いて見えるものなのかと感心するほど、とても自分とは思えない三割増し男前の和成がそこにいる。

 なんだか面映ゆい思いで二枚の便箋を最後まで読み終えた和成は、改めて佐矢子への罪悪感を覚えた。

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