月下の誓約
手紙の中には、どこにも和成の返答を求めてはいなかったのだ。
本人が言った通り純粋に想いを伝えたかっただけ。
そして最後の一文は和成への思いやりだった。
”もしも私の想いがあなたを不快にしたならごめんなさい。明日からも今まで通り職場の同僚として普通に接していただけるなら嬉しく思います”
手紙を新しい封筒に収めて、深くため息をつく。
首に手ぬぐいをひっかけて廊下に出ると、自室前にある中庭へと降りる石段に腰を降ろした。
少し肌寒くなってきた晩秋の夜風が濡れた髪を撫でていく。
見上げる空には沈みかけた細い月が、和成の愚行をあざ笑っているように思えた。
ぼんやりと月を眺める。
少しして自室から無線電話の着信音が聞こえた。