月下の誓約
『それは自分で解明しないと意味がないからな。そのかわりひとつお伽噺を聞かせてやろう』
「はぁ?」
和成が訝しげに眉を潜めた時、右近が歌うように語り始めた。
『昔々あるところに子供のいない老夫婦がいました。ある夜おじいさんは”子供が欲しい”とお星様にお願いをしました。すると魔法使いが現れて二人のかわいがっていた人形に命を与えたのです。魔法使いは人形に言いました。”おまえが正直で勇敢で優しい子になった時、本物の人間にしてあげましょう”』
冒頭の部分だけで、右近は話をやめた。
「その話は俺も知ってる。何の関係があるんだよ」
『おまえが中途半端なのは、命を与えられたばかりの人形と同じだからだ。どうすれば人間になれるのか。その意味が分かれば答えは見えてくるはずだ。じゃあな。明日はしっかり償いをしてこい』
そう言って右近は、一方的に電話を切った。
手の中の電話を見つめたまま、和成はつぶやく。
「人間になる方法って……正直で勇敢で優しい子になったら……俺はそうじゃないって? ……それとも別の意味?」
和成は腕を組んで首を傾げながら、少し考えてみる。
「さっぱりわかんね」
結局早々に諦めた和成は、寝台にゴロンと転がってそのまま眠りについた。