月下の誓約


「社交辞令だとしても、和成様にそう言ってもらえると嬉しいですね。それとも少しは私を断った事、後悔してくれました?」

「え?」


 和成が返答に窮していると、佐矢子がクスクス笑った。


「そんなあからさまに困った顔しないで下さい。今日一日和成様と一緒に過ごせるだけで私は満足ですから。一日だけ我慢して下さいね」

「我慢だなんて……。むしろ佐矢子殿の方が退屈するんじゃないかと思ってます。私は女性が楽しいと思うような事は何ひとつ知りませんし。塔矢殿に言わせれば私は”ひきこもり”だそうで」


 佐矢子は声を出して笑った後、笑顔のまま和成の右腕につかまった。


「大丈夫です。私の行きたい所について来て下さい」


 その強引とも思える態度に面食らって、和成は佐矢子のつかまった右腕を見る。

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