月下の誓約
自分の名前が呼ばれ、和成は俯いていた顔を少し上げ、紗也に視線を送る。
紗也はおかまいなしに続けた。
「軍師って戦略を決める人でしょ? さっきいた人たちの中じゃ、和成は一番若そうだったし、塔矢みたいにもっと経験豊富な人がやる方がいいんじゃないの?」
「これは手厳しい事をおっしゃる」
そう言って塔矢は、声を上げて笑った。
意見を否定されたわけではないが、なんとなく小馬鹿にされたようで、紗也は少し頬を膨らませた。
「何がおかしいの?」
「失礼しました。軍事についてよくご存じでない紗也様の疑問はごもっともです。ですが、うちのような小国がこれまで何度となく敵国を退けてこられたのは、和成の戦略のおかげと言っても過言ではございません。彼は皆も認める天才軍師なんですよ」
「え……?」