月下の誓約


 佐矢子は和成の左側を覗き込んで指差した。


「その刀です。そういうのを見ると、和成様はやっぱり軍人なんだって思い知らされます」


 彼女の口調には悲しげな嫌悪感が滲んでいる。


「塔矢殿に丸腰で出歩くなと注意を受けましたので。無粋な出で立ちで申し訳ありません。軍人はお嫌いですか?」


 和成が尋ねると、佐矢子から笑顔が消えた。
 少し俯いて悲しげに目を伏せる。


「嫌いです。軍人は嘘つきだから」
「嘘つき?」
「私の父は軍人でした。”この戦が終わったら”が口癖で……」

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