月下の誓約
「私はおこりんぼで失礼な奴なんですよ。紗也様にいつもそう言われてます」
「そういえば、和成様は紗也様の護衛官でしたね」
和成は一旦佐矢子の手をほどいて正面に立つ。
「本日は紗也様ではなくあなたの護衛を務めさせていただきます。どこへなりとお供つかまつります。佐矢子様」
そう言って、恭しく頭を下げた。
照れくさそうに笑いながら、佐矢子は再び和成の腕を取る。
「なんだかお姫様になったような気分ですね。では参りましょう」
和成を促して、佐矢子は商店街の方へと歩き出した。
午前中は佐矢子に連れられて、商店街の店をあちこち見て回る。
十二時過ぎに佐矢子のお気に入りの店で昼食を摂った。
食事を摂りながら、和成は午後の予定について佐矢子に尋ねる。
特に決めていないという彼女に、歩いてばかりだと疲れるので午後から芝居でも見ますかと提案してみた。
けれど佐矢子は、芝居よりも和成の顔を見て、和成と話がしたいと言う。
昼食を終えた二人は、再び商店街を歩き始めた。