月下の誓約


 少し前から和成の表情が固いことを、佐矢子は不安に感じていた。

 話しかけても上の空で、左手はずっと刀の柄を触っている。
 何度か右腕につかまろうとしたが、さりげなく躱されて、つかまるのを諦めた。

 元々和成とこうして一緒にいられる事自体、佐矢子が有無も言わさず強引に連れ出したからだ。
 和成にしてみればたまの休みを奪われていい迷惑に違いない。

 佐矢子ははしゃぎ過ぎた疲れも手伝って次第に口数も減ってきた。

 ふたりは並んで黙々と商店街を歩く。
 少しして和成が佐矢子に話しかけた。


「やはり疲れたんじゃないですか?」
「いいえ。大丈夫です」


 佐矢子が笑顔を作って答えると、和成はそれを遙かに上回る極上の笑顔で佐矢子を見つめた。


「素直じゃないなぁ」


 そう言って、少し強引に佐矢子の肩を抱き寄せる。

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