月下の誓約
「目的は私だと思います。私は他国の者から煙たがられているらしいので」
「お邪魔でしたら、私は帰りましょうか?」
「いえ、今あなたをひとりにすれば、あなたに危害が及ぶかもしれません。こんな人混みの中では彼らも行動を起こせないでしょう。人気のない所に誘い込んで一気に片を付けますそのためには塔矢殿に応援を頼みましょう。無線電話はお持ちですか?」
「はい。持ってます」
佐矢子が鞄から電話を取り出した。
和成も懐から電話を取り出し、佐矢子が持った電話の横に並べて見せる。
和成の電話は佐矢子のものよりひとまわり以上大きい。
「へぇ。市販のはやっぱ小さいですね。軍用はこんなに大きいんですよ」
まるで電話番号の交換でもしているかのように、和成は時々佐矢子の電話を見ながら操作する。
もちろん操作の内容は番号交換ではなく、塔矢への応援要請。
佐矢子も同じように操作するフリをした。