月下の誓約
紗也の目が驚きと共に大きく見開かれ、和成を見つめる。
和成は視線を逸らしつぶやいた。
「天才じゃありませんよ。買いかぶりすぎです」
珍しいものでも見るように、紗也は和成を凝視する。
塔矢は壁の時計にチラリと目をやって紗也に声をかけた。
「紗也様、そろそろ作法の時間ではありませんか?」
言われて紗也も時計を見ながら立ち上がった。
「あ、本当だ。遅れたら女官長に叱られちゃう」
バタバタと慌ただしく会議室を出て行く紗也を見送り、塔矢は席を立った。
そして項垂れた和成の側に行き、ポンと肩を叩き隣に腰掛けた。