月下の誓約
5.取引
和成と佐矢子は商店街の店を冷やかしながら人混みを避け、ゆっくりと街はずれへ移動していく。
街はずれの公園を抜け、数軒の民家の間を通る頃には人影は途絶えていた。
国境の関所へと続く雑木林に差し掛かった時、和成は佐矢子に耳打ちした。
「そろそろ動きがあると思います。私が合図したら全力で逃げて下さい」
佐矢子は不安げな表情で和成を見上げる。
「和成様は?」
「私ひとりなら何とでもなります。塔矢殿ももうじき来るでしょうし。お願いですから私にかまわず逃げて下さいね」
「わかりました」
雑木林の中に踏み込んで少しした頃、和成の予想通り突然目の前に三人の男が回り込んで行く手を塞いだ。
和成たちが立ち止まって振り返ると、後ろにも二人立っている。
五人は同じように着物の上に外套を羽織り、その下に刀を隠し持っているようだった。