月下の誓約


 前方にいた、五人の内で一番年上に見える男が和成に語りかけてきた。
 彼が五人の統率者なのだろう。


「はじめまして、杉森の軍師殿。このような人気のない場所にやって来るなど、いささか軽率ではありませんか? あなたは自分の価値をご存じないと見える」


 和成はわざとらしくため息をつく。


「何を勘違いしているのか知らないけど、せっかく二人きりでイチャイチャしようと思ったのに邪魔しないで欲しいな」


 男は動じる事なく、和成を見据えた。


「ごまかしても無駄です。杉森の軍師は少年だと聞いています。我々は城に出入りする者を監視していました。あなたより若い者はおりませんでした」


 それを聞いた佐矢子が、和成の隣でクスリと笑う。
 顔を向けた和成と目が合った佐矢子は、口を押さえて「すみません」と首を竦めた。

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