月下の誓約


 和成は口の端に笑みを浮かべて小声で言う。


「余裕じゃないですか。頼もしいかぎりです」


 蚊帳の外に置かれた男が、苛々した口調で怒鳴った。


「こそこそ話すのはやめてもらおう!」

「だって、少年を捜してんなら俺に目を付けた事自体間違ってんだもの。俺、今年で二十七。酸いも甘いも噛み分けたりっぱなおやじ」


 からかうように手を振る和成に、男は益々激昂する。


「ふざけるな小僧! つくならもっとマシな嘘をつけ!」
「嘘じゃないんだけどな」


 和成が本気で肩を落とすと、隣でまた佐矢子が笑った。

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