月下の誓約


「とにかく、痛い目に遭いたくなければ、おとなしくご同行願おう」


 男の要求に対して、和成は諦めたようにひとつ嘆息し、

「わかった。おとなしく従う。そのかわり彼女は解放してほしい」
 と言って佐矢子を視線で指し示す。

 男は満足げにニヤリと笑った。


「よかろう。刀を捨てろ」


 腰の刀を引き抜き、和成は持った右腕を目の前にまっすぐ突き出す。
 そしてチラリと佐矢子に視線を送り、目で合図した。

 佐矢子は小さく頷いて、ゆっくりと和成から離れる。

 和成が手を開き、持った刀が地面に落ちると同時に、佐矢子はその場に背を向け後方にいた二人の横を素早くすり抜けて走り去った。

 統率者の隣にいた男が、和成の落とした刀を足の先で後方へと蹴り飛ばす。
 そして和成を捕らえるために、手を伸ばして近付いてきた。

 統率者は和成の後ろにいる男に、「追え」と命令した。

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